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DIAL "M" FOR MURDER
ダイヤルMを廻せ!


《schedule》

1997年9月12日(金)〜9月23日(火)

アートスフィア
9月27日(土)〜10月5日(日)
シアター・ドラマシティ



《cast》
安寿ミラ(マーゴット・ウェンディス)
大谷亮介(トニー・ウェンディス)
升 毅(マックス・ハリディ)
岡森諦(レスゲート大尉)
壌晴彦(ハバード警部)
鈴木良一(ウィリアムス)
高木順巨(トンプソン)

関根信昭(裁判官(声))
岡崎潤司(TBS)(アナウンサー(声))


《Staff》
原作/FREDERICK KNOTT
演出/勝田安彦
翻訳/福田美環子
美術/大田創 照明/佐壽晃 衣装/宇野善子 音響/井上正浩
ヘアメイク/スタジオAD 演出助手/高野玲 舞台監督/小林清隆


《Story》

マーゴットの憂鬱
「君と最後に会ってから、きっかり52人殺した」「そうだったわね。毎週一人ずつ殺してたんだったわね」「毒殺、射殺、絞殺、刺殺・・・週によってお好み次第さ」高級アパートメントの一室、若い男女の密やかな会話−聞く者がいれば耳をそばだてるような−は続く。しかし、何のことはない、男はマックス・ハリディ(升毅)、アメリカでテレビの探偵ドラマを書いている作家だ。そして女性はマーゴット・ウェンディス(安寿ミラ)、財産家の女性である。「人を殺す動機は五つ。恐怖、嫉妬、金、復讐、そして愛する者を守るためさ」マックスは延々と犯罪談義を続けるが、マーゴットはうわのそらだ。マーゴットには有名なテニス選手だったトニー(大谷亮介)という夫がいる。一年と少し前、自分勝手な夫に疲れたマーゴットは夫が留守の間に、マックスと出会って恋に落ちたのだが、離婚を躊躇している内に、マックスは仕事の都合でアメリカに帰ってしまった。そして今日、恋心をトニーに隠したまま一年ぶりに再会したのだった。気がかりなことはまだあった。二人は離れている間、手紙を交わし続けていて、マーゴットはその中の一通 を常にハンドバッグに入れ持ち歩いていたのだった。しかしある時、そのハンドバッグを紛失し、手元に戻ってきたときにはお金と手紙だけがなくなっていた。そしてその後、ジョン・S・キングと名乗る男から脅迫状が送られてきたのだ。「僕たちのことをトニーに話す気はないのかい、結局は僕らにとってプラスになるとは思わないか?」と詰め寄るマックスに、マーゴットは一年前とは状況が違うのだと説明する。「トニーは大人になった。テニス界から引退し今はスポーツ用品店に勤める理想的な夫だ」と。

トニーの計画
トニーはすでにマーゴットとマックスの関係を知っていた。しかし離婚するにはマーゴットの財産が惜しいし、何よりも嫉妬心があった。そして、彼は決意した。妻を殺させる完全犯罪を・・・彼はまずレスゲート大尉(岡森諦)なる人物に電話をし、車の売買について相談したいから自宅に来て欲しいともちかけた。実はレスゲート大尉<本名C・A・スワン、大学の同窓生で今は、結婚詐欺を生業にしている>ということは調査済みだった。大尉が家に来ると、昔の秘密で揺さぶりをかけ、自分の計画をもちかけた。アメリカにツアーに行っている留守中に妻に恋人が出来たこと、その恋人からの手紙を盗んで強迫状を出したことを打ち明け、妻を殺してくれればそれなりの報酬を出すと告げた。次第にトニーの術中に陥っていくレスゲートは、とうとう決心して詳細を聞く。「明晩、僕とマックスはパーティーに行くマーゴットはいつものようにラジオを聴いて、早寝をするはずだ。君はきっかり10時37分に階段のカーペットの下に置いておくドアの鍵を使いこの部屋に入る。10時40分、僕からの電話で妻がこの部屋に出てくる。カーテンの陰に隠れている君は、彼女が受話器を取ったところで首を絞める。終了の合図は口笛だ。何もしゃべるな。それから物盗りの犯行に見せるために、部屋を荒らし、窓を開け放しそして、最も肝心なのは出ていくときに鍵を元の場所に戻しておくことだ」「しかし・・・」とレスゲートは指摘する。「君はどうやってこの部屋に入るつもりだ?」「もちろん抜かりはない」と、トニーは説明する。「カーペットの下に置く鍵は、マーゴットの鍵を使う。アリバイ作りの為に行動を共にするマックスが、帰宅後庭などを調べている間に、マーゴットのバッグに返しておくのだ」と。

レスゲートの失態
翌日の夜。トニーは隙を見つけて、マーゴットの鍵を階段のカーペットの下に隠した。そして10時37分、入り口のドアが静かに開いて、レインコートに革の手袋といういでたちのレスゲートが入ってきた。電話のベルが鳴り、カーテンの後ろに隠れると、マーゴットが寝室から出てきた。彼女が電話に出た瞬間、時は訪れた。スカーフでその首を締め上げ、もみあう二人。デスクの上に押し倒されたマーゴットの手はハサミを探り当て、最後の力を振り絞ってレスゲートの背中に突き立てた・・・勝負はあっけなく決まった。計画の失敗を知ったトニーは、素早く駆けつけ今度は偽装工作を始めた。レスゲートの死体のポケットから鍵をマーゴットのハンドバックへ、マックスの手紙をレスゲートのポケットに。これで警察はマーゴットがレスゲートに脅迫されていたと考えるだろう、とトニーはほくそ笑んだ。

マックスの推理、ハバートの決断
事件から数ヶ月後、ラジオからニュースが流れている。「ウェンディス婦人はC・A・スワン殺害で有罪判決を受け、死刑が確定しています・・・」裁判では、庭から家に侵入した形跡が無かったこと、レスゲートが家の鍵を持っていなかったことから、殺されたレスゲートが脅迫者で、マーゴットが彼を家に引き入れ、殺してしまったという結論に達していたのだ。全てはトニーの思惑通 りに運び、明日刑が執行されることが決まっていた。しかしここに二人、結末に納得していない人物がいた。一人はマックス、思い詰めた顔でトニーを訪ね、マーゴットを助けるために、実はトニーが殺人計画を立てたのだと告白しろと迫る。もう一人は、捜査に当たったハバート警部(壌晴彦)だ。警部は捜査中も、トニーに不信感を持っていた。そして今日も、最近のトニーの金遣いの荒さを指摘し、その金の出所を追求しに来たのだった。警部はかなりの確率でトニーが犯人だと思っているが、物証が何一つない。そこで一計を案じ、トニーの留守中にマーゴットとマックスを家に招き入れた。「実は私はこっそりこの家に入るために、警察に保管してるマーゴットさんの鍵を拝借しました。ところがその鍵では入れなかったのです。これが何を意味しているか分かりますか?」と説明しながら、最後の賭に出た・・・